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「なんで分かってくれないんだよ」
「今度ハ被害者面カイ」
心を揺さぶられたせいだろうか。
あの部屋に入った時の心が落ちていく感覚、死にたいって感覚が心を蝕み始める。
「俺はただ心残りだけでも晴らそうって」
『望ンデナイ』
ソレはそう言い切った。
『連レテ行ケレバソレデイイ。
一緒ニ苦シミ続ケテクレレバソレデ』
頭が痛い。
だって、死にたくない。
けどズルーも助けたい。
ソレにも救われて欲しい。
俺は間違ってるのか。
苦しみ続けることがいいことだなんてあるわけないじゃないか。
けど、その思いも死にたいという思いに飲まれていく。
死にたくなかった筈なのに、どうしてこんなに矛盾した自分が生きているのか分からなくて心が冷たいものに飲まれていく。
「分かった。
身体を貸すよ」
言葉が自然と漏れ出る。
ただ只管にどうして自分が生きているのか分からなくて、何が正しいのか分からなくて消えてしまいたくて出た言葉だった。
ソレの口元が孤を描く。
どの道、これを狙っていたのだろう。
身体に冷たいものが重なっていくのが分かった。
「身体は貰うよ。
約束は守らないけどね。
だって、今の申し出は君の意思じゃないだろう」
そうだ。
今の言葉はただ拒否しただけだ。
考えることを、生きている事を拒否して出た言葉だ。
心がどんどん重く冷たくなっていく。
とても眠い。
「身体だけは貰ってあげるよ。
君の名前はジスト、だっけ」
周囲の温度が平常に戻っていく。
代わりに俺の中は冷たく重いものでいっぱいになった。
凍りついて、動けなくなる程に寒い。
寒くて冷たくて、俺は我に返った。
どうして身体を明け渡してしまったのだろうと。
「演じることにはなれているから安心して。
俺はずっとズルーとここにいる。
だから、安心して眠ってね」
心にまとわりつく氷の塊で身動きが取れないまま、俺はそれを見ているしか無かった。
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