24人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に真っ先に駆け込んできたのはフリーだった。
丁度身体を起こしたばかりの俺に抱きつくように飛びついてくる。
「一週間も目を覚まさないから、心配してたんだよ」
衝撃で身体が潰れるかと思った。
俺を抱きしめる力が強すぎて、改めてフリーの頼もしさを肌で感じる。
頭を抱えるようにして俺を抱きしめたまま振り返ったフリーの視線を受けるのはダガーナイフだ。
「ね、二人きりにしても大丈夫だったでしょ」
ダガーナイフはフリーの声には答えず俺に視線を向けた。
そういえばダガーナイフはズルーがもう子供に手を出すことが無いように、ズルーを監禁してずっと見張り続けていたんだったっけ。
「フリー、痛い」
「ごめんねジス君、つい。
そんなに力入ってたかな」
開放された身体がよろめく、力が上手く入らない。
「俺、どうしてたんだ」
「君がアメ君と話をするって出ていったあの日、扉の前で倒れてたんだよ。
真っ白い顔して動くなってたからびっくりしちゃって、直ぐにファンクさんのとこに連れて行きたかったんだけどフリーもあの時はまだ上手く動けなかったから」
ちらりとフリーがダガーナイフに視線を向けた。
なるほど、ダガーナイフに止められたのか。
「具合、まだ悪そうだな」
ようやく口を開いたダガーナイフは一言簡潔にそういった。
実際俺の身体は怠くて重くて、起き上がるのがやっとだ。
自分の身体が戻ってきたのに別人の身体のように重くて噛み合わない。
「ファンクさんのとこに連れてった方が良さそうだね」
フリーが今度は視線を何故か部屋の外にいるズルーに向けた。
「ジス君連れてくけど、良いよね」
ズルーは答えなかったが、小さく頷いた。
「待って」
俺は身体に手を回そうとしたフリーの身体を押した。
一瞬頭に浮かんだのはソウルイーターの言葉だ。
町の現状をフリーに教えないで欲しいって言ってた。
ソウルイーター達は今ブライテストと一緒に行動しているらしいし、フリーはブライテストの事を怖がってる。
出来れば会わせたくない。
「だ、大丈夫。
能力が戻れば自分で行けるから」
声を振り絞って俺は何とかそういった。
魔眼はまだ治らない。
それに身体が死ぬのほど怠いけど、今はそれだけだ。
焦点がたまに霞むけど、それだけ。
「それより、アメはどうなったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!