150th-目覚め

3/3
前へ
/368ページ
次へ
「それはこっちが聞きたいよ。 ジス君こんな状態になって戻ってくるし、一体何があったの」  質問した俺にフリーが質問を返す。  良かった。  フリーは俺の体調が悪いのはアメのふりをしていたあいつのせいだと思っているみたいだ。 「それは」  言いかけて戸惑う。  言っても良いんだろうか。    アメと入れ替わっていた誰も名前を知らないあいつの事を。  俺は答えられずに視線を落とした。 「フリー達のこと、信用出来ないのかな」 「そんなんじゃない」  それだけ口にして言葉を止める。  ずっとあいつはズルーに正体を知られるのを恐れ続けてきた。  自分が死んでも、死んでからもずっと。  それを俺が勝手に口にしていいのか分からなかったし、口にするならあいつが言わないといけない。  そんな気がした。 「ただ、もう大丈夫」  俯き気味に答える俺に、足音が近づいた。  ダガーナイフの声が「本当にか」と俺を咎める。  まるで全部知っていると言わんばかりの迷いの無い声に、俺は俯いたまま頷いた。  ダガーナイフの吐息がかかり、至近距離で俺の顔を覗き込もうとしているのが分かった。   「ちょっと、ジス君は病み上がりなんだよ」    だが一向に俺が視線を上げないので、フリーがダガーナイフを諌めた。    あいつの事を話すなら、ズルーにだけ話したい。  話せる範囲で。 「フリー達に出来る事あるかな。 ご飯食べるよね、お腹空いてるでしょ」  俺は首を振って、視線を上げた。 「ズルーと二人きりにして欲しい」 「分かった」  ダガーナイフの声が一言響いたかと思うと、フリーから「ちょっと、フリーだって心配してたのに」と声が上がる。  顔をあげるとダガーナイフがフリーを肩に担いで連れて行こうとしているところだった。  部屋の入り口でダガーナイフがズルーを見る。 「手は出すな」  念を押すように一言言うと、抗議が続くフリーを無視してそのまま出ていった。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加