24人が本棚に入れています
本棚に追加
151th-傷つけ合うということ
二人が居なくなった後、暫くズルーは部屋の外にいた。
けど俺が何も言わないから埒があかないと思ったんだろう、ゆっくり部屋の中に入ってくる。
ベッドの側に立ったまま俺を見下ろしている。
そこまで大男って訳じゃないけれど、ただ見下されてるのはちょっと圧迫感ある。
「座れよ」
俺の声にズルーは黙って従った。
ただ俺に背を向けるようにベッドの縁に座った。
ズルーは何も言わないし、話したいと言ったのは俺だけど何から話せばいいのか。
頭の中がぐしゃぐしゃする。
アメのふりをしていたあいつが中に入ってきた事か、俺の意識が戻るまで本当にあいつは何もしていなあったのかとか色々聞きたいことはあるけれど。
「アメと話をしたよ」
最初に言えたのはそれだけ。
ズルーも「そうか」と短く返した。
今ズルーは何を考えているんだろう。
アメと話して来た俺を前にして。
話に行く前、ズルーはアメがアメじゃないことには気づいているって言ってた。
だったら聞きたいこととかあるんじゃないのか、俺がどこまでズルーの気持ちを伝えたのかとか。
「ズルーは気にならないの、あいつが何を思って死んでからもここへとどまり続けていたのか」
「恨んでいただろう」
そんな事は分かっていると言わんばかりの素っ気なさだった。
「うん。
ただ、それだけじゃなかった気がする」
連れていきたがっているのは分かる。
でも俺の身体をのっとってまでズルーの側にいたいと思ってたのは、それが全てじゃない筈だ。
縛り付けたいと思っているのはきっとただズルーに執着している訳じゃない。
「話に行く前にズルーが言ってた事覚えてるかな。
俺はあの言葉をあいつに向けて欲しい、あいつに直接伝えて欲しい。
あいつに本当の」
言いかけて、俺は言葉を噤んだ。
何故か、この先は言っちゃいけないような気がした。
誰かが俺の中で言うなと叫んでいるような。
俺は胸を抑えて、あいつと共有した過去を思い返す。
痛いほどに伝わってきたのはいつだって、同じ感情だった気がする。
それでも俺はあいつの事を全て理解出来ているとは言い難い。
あいつの過去を実際に見て、分かっている気になっている部分も多いだろう。
それはきっとあいつも同じ筈だ。
俺の身体に入った時点で、ズルーが俺に話した言葉もきっと全部じゃなくても伝わってる。
それでもきっと伝わりきらないものはある。
それだけはきっと俺では駄目で、ズルーが直接あいつに言わなきゃいけないことなんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!