青い夏

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「でも楽しみってことは、いいかんじなんだね」 実咲はもうにやにや笑いをやめて、前を向いて歩いている。 「楽しみ」。まあ、楽しみではある。 「いいかんじ」。どうだろう。嫌われてはない、と思うけど。 「向かうところ敵なしなんでしょ?」 「なんでそうなった?」 「だって彼氏いないって」 「彼氏はいないけど敵はいるな、たぶんな」 「そうなの?」 「いや、知らないけど。ていうかそもそも向かうところ敵なしって最強って意味じゃないの」 「そうなの?」 「知っとけ」 小さいころから何度も通ってきた道を、また辿る。懐かしさもない。だって俺は生まれたときから、ずっとこの町にいる。 「でも西岡さんかわいいんだから、もたもたしてたらほかの人にとられちゃうよ」 「……実咲西岡のこと知ってんの?」 「西岡さんはあたしの友だちの友だちの友だちだもん」 「まじで? けどそれけっこう遠くね?」 「まあね」 「……おまえほんとはよく知らないだろ」 「まあね」
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