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「こうなったら、サクラちゃん達に頼むしかないっ!」
私は決意に拳を握る。
「サクラちゃんやマキちゃんなら多分八時の狩りに参加できると思うし!私達の分の素材調達も頼もう!」
『対価要求されるぞー絶対!』
「わかってるう!リアルでもゲーム内でも相応しい報酬は払う所存……っ!財布が痛んでもこの際気にしないことにするう!」
『さすが、伶奈殿!潔いでござるのぉ!』
「わっはっは!」
まあ、今月金欠なわけですが。自分の財布事情を思い出し、私は心の中で血の涙を流すのだった。背に腹は代えられない。最悪虎の子のお年玉を落としてきてなんとかしようと決める。まあサクラやマキのこと、そんなに高いお強請りをしてくるとも思っていないが。
実際、こういうゲームでは友達同士で助け合ってミッションをクリアするのも醍醐味なのである。失敗してもいいし、多少こういった貸し借りがあってもいいと思うのだ。はっきり言って、友達と同じものを共有して楽しむための口実半分であるのだから。
同じ趣味を共有できる友人は、何人いてもいいものである。できることなら彼女達とは、ファンタジーハンターがサ終になっても、高校生や大学生になっても関係を続けていきたい。実際、一番一緒に遊んでいるカナコは同じ中学ではない。小学校の時に遠方に引っ越してしまったあとも、こうしてネットやメールを通じて繋がっている大切な仲間の一人であった。
「ん?」
がちゃん、と玄関からドアが開く音。ひょい、と自室から外を覗けば、背中を丸めて大きなランドセルを背負っている少女の姿が見えた。
「佐奈、お帰り。どうしたん?」
私が声をかけると、妹の佐奈はちらりとこちらを見て、小さくため息をついた。
「……ただいま。……何でも、ない」
「……ふーん?」
何でもないわけがあるか。そんな露骨にしょんぼりした顔をしておきながら。
私の前をとぼとぼと通過して、奥の自室へ向かう佐奈。そのランドセルは、なんだか妙に寂しい有様となっている。いつもならキーホルダーがじゃらじゃらくっついているはずなのに。
――そういえば、数日前からつけてないな、キーホルダー。
私と違ってアウトドア系、友達と遅くまで遊んで帰る事も珍しくない佐奈である。サッカー部の活動も週に二度あるから尚更だ。ゆえに、彼女が私より遅く家に帰るのはごくごく当たり前のことなのだが。
――まだ四時半なのに、帰ってくるとか。
ちらり、と私は時計を見る。
最近妙に、彼女の帰宅が早いことが気になっていた。
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