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「おいで」は私を甘やかす合図で、兄が両腕を広げたら、私は一目散に駆け寄る。
「猪突猛進!!」
「瑠生は俺のこと好きだね」
「好き!大好き!お兄ちゃんは?」
「好きだよ」
腕の中は兄の匂いがして、干したばっかりのお布団のように暖かくて、どこに居るよりも安心した。その中でキャッキャ騒いでいる時もあれば、わんわん泣いている時もあって、色々だった。
わがままを言えなかった私がわがままを言える場所、感情表現が苦手な私が感情表現が出来る場所で、兄は私を《子供》として扱ってくれた。
嬉しい気持ちがあったのに。いつから《子供》として扱われるのが嫌になってしまったのだろう。
中学1年生。兄を避けるようになったのは。
触れられなくなった。
目を合わせられなくなった。
話せなくなった。
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