走り出した君を僕は黙って見とった。

1/18
前へ
/18ページ
次へ
『かげ!公園まできょうそうじゃ!』  いつでも君は自由で気儘で、僕のことなんか構いもせんと走り出しとった。 『ようちゃん、まって!おいていかんで!』  鈍くさくてトロい僕は置いていかれんように、その背中を一所懸命追っかけとった。  生まれた頃から一緒におって、ずっとそうしとったけど、君に追いつくどころか距離を縮めることすら、たったの一度も、僕にはできんかった。  じゃからね、ようちゃん。  子どもの頃から変わらんと、君は、僕の憧れじゃった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加