走り出した君を僕は黙って見とった。

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 ようちゃんが走り出した時、信号もない十字路に大きなトラックが突っ込んできた。  弾かれた黒い詰め襟は、オレンジの空を飛んで、鈍くアスファルトに落ちた。  キュルキュルと嫌に嘶いて、排気を撒いて、トラックが去っていく。  寝そべって、道路を赤々と染めていくようちゃんは、僕をひどく懐かしい気持ちにさせた。 ああ、あん時と同んなじじゃ。
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