走り出した君を僕は黙って見とった。

12/18
前へ
/18ページ
次へ
『かげ!公園まできょうそうじゃ!』  いつでも君は自由で気儘で、僕のことなんか構いもせんと走り出しとった。 『ようちゃん、まって!おいていかんで!』  鈍くさくてトロい僕は置いていかれんように、その背中を一所懸命追っかけとった。  いつものように校門を出て、前の十字路に差しかかった時、横から来た車が僕を宙に浮かした。  体が地面にぶつかって、記憶が途切れた。  僕は、そのまま死んでしまった。  小学校に上がって、二回目の冬じゃった。  ちょうど五年前の、今日じゃった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加