走り出した君を僕は黙って見とった。

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 先生より、ようちゃんのお父さんやお母さんやお祖父ちゃんより、僕が一番、君の背中を追っかけとった自信があった。  そんな自信持っとっても腹ぁ膨れんぞ、って、ようちゃんは笑うじゃろうけど、勉強も運動も、何の取り柄もない僕には、それが唯一の誇りじゃった。  転んで擦り剥いても、ようちゃんがそこに手を当てて、こんなもんはケガのうちに入らん、大丈夫じゃ、って言うてくれたら、ほんとうに痛くなかった。  傷の治りも他の子より、うんと早いって保健の先生にも驚かれたくらいじゃ。  ようちゃんが、キラキラしとるようちゃんが、友だちとして認めてくれとる。  それだけで、僕は他の人にも気後れせんと生きていかれた。  じゃからね、ようちゃん。  僕は、子どもの頃と同んなじように、君の背中を追っかけて走りたい。ただそれだけじゃった。  それだけじゃった。
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