走り出した君を僕は黙って見とった。

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ようちゃん、ようちゃん。 なんで逃げるん。 こっち来て、僕の話聞いてや。  距離を縮めたくて少しだけ踏み出したら、ようちゃんは怖い先生に叱られた時より眉を下げて、背中を叩かれたみたいに肩を跳ねさせた。 「すまん!」  泣きそうな声が、誰も居らん夕暮れの景色に響いて消えた。  遠くの方で鳴っとる車のエンジンも、それに吠えとる犬の声も、僕らのことなんか見向きもせんかった。
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