交差点

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 ちょっとコンビニ行ってくる。そう嘘をついて部屋着のまま家を飛び出した。  走る。走る。消去法によってしぼられたいつもの場所へ、ただ走る。  冷たい夜は皮膚を刺し、喉をすり切る。血のにおいが鼻から抜ける。それは目の奥を刺激して涙になる。体の芯は燃えるように熱い。  走るのは大嫌いだ。汗はかくし髪も乱れて疲れる。おまけに次の日の筋肉痛までついてくる。それでも、走り出さずにはいられない瞬間が、あたしにはあった。  もうむり。走れない。  限界を感じる頃にちょうどたどり着く小さな公園は、寂しげに時を止めていた。ふらふらと最後の力をしぼりながら、ふたつ並んだブランコの片方に座った。鎖はキンキンに冷えていて掴んだ手によく馴染んだ。  じわりと汗がにじむ。大きく深呼吸をしても息は苦しいまま。足はだるい。頭はぼんやりしてるのに涙だけは止まらない。
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