1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
真菜なら、これくらい気持ちよく走り抜けてしまうんだろうな。そもそもこんなバカなことしないか。もし万が一、真菜が同じことをしようとしたら、お母さんは止めるんだろうな。
ばつぐんに頭が良くて運動神経もあって人当たりもいい。あたしが人並みに持っていたものを、真菜はうしろから簡単に飛び越えていった。同じことをしてもかなわない。結果も、周りからの評価も。
お父さんもお母さんも、誰かに真菜のことを話すときは恥ずかしそうに謙遜した。あたしにはそれが誇らしそうにも見えた。あたしのことは、そんなふうに話さないくせに。
でも、家はあたしの居場所で、家族は嫌いにはなれなかった。なんだかんだ言って真菜のことは大好きだし、優秀な娘を自慢したくなる親心もわかる。
あたしを見てほしい。認めてほしい。小さな嫉妬と劣等感は少しずつあたしを狂わせて、いつしか張り合うことをやめてしまった。
誰が悪いとか、そういうのはないんだと思う。でも強いて言うなら、真菜と一緒にがんばる道を諦めたあたしが悪いような気がする。
足を地面につけたままブランコを揺らす。鎖のきしむ音が静かな公園に響いた。いつの間にか涙は止まっていた。内側にこもっていた熱は汗によって奪われ、どうしようもなく寒かった。
カゼをひいたらイヤだし帰ろう。よけいな心配はかけたくないし。
ひとつため息をついて代わりに冬を吸いこんだ。鎖を握る手に力をこめて立ち上がろうとする。
最初のコメントを投稿しよう!