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「……ねえ、どうしてそんな薄着で外にいるのか、聞いていい?」
ほっぺと鼻の頭を赤くしておずおずと尋ねてくる。菊池さんの顔は上にあるのに、下からのぞきこまれてるような気がした。それはあたしを傷つけないように、ていねいに接してくれているように思えた。
あたしが小さく頷くと空いているブランコにゆっくりと腰かけた。鎖がきしみ、目線がぴたりと合う。
「あたしさ、ふたつ下に妹がいて、今ちょうど高校受験の追い込みしてるんだよね。なんか家族から、お願いだから邪魔だけはしないで、って言われてるような気がして居づらくて」
周りの気を引きたくて悪い子になってみたはいいけど、最後はびびってしまう。そんなあたしの悪いくせのつまった笑顔で軽く話した。
こうやって話せばたいてい同じようなテンションで返ってくるのに、菊池さんは大きく目を見開いたあと、視線を落とした。耳から流れ落ちた黒い髪の隙間から悲しそうに笑うのが見える。
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