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【 エピローグ: 7つ目の選択 】
『ボウッ、パリンッ、パチパチパチ……』
今、私の目の前に、大きなオレンジの炎が見える。
その炎は、父が作ったこの自慢の木造住宅を飲み込んでいる。
35年間、ずっと父と一緒に過ごしたこの家が、あっという間にオレンジ色に燃え上がる。
その大きな火柱は、家の2倍ほどの高さまで達している。
窓ガラスは割れ、時々『ボンッ!』というガスに引火した音もする。
瓦も落ち、『パリン!』という音が響き渡る。
この炎の勢いでは、父とあの若い女性は、もう助からないだろう……。
ぐっすりと眠っているだろうから……。
これで、6つ目の選択をしたことになる。
父との別れ……。
走り続けてきた35年間の父との生活をこれで最後にできる。
この生活にも、もう疲れてしまったんだ……。
私は、エプロンのポケットから自分のスマホを取り出し、消防へ連絡する。
「家が燃えています。すぐに来て下さい……」
左手で電話を切ると、まだ震えている右手を彼が隣で、やさしくそっと握ってくれた。
彼の綺麗な瞳に、燃え上がるオレンジ色の炎が美しく輝く。
私は少し安心し、小さな笑みがこぼれた。
手を繋いでくれた彼も私と同じ気持ちだと気付いたから……。
「これで良かったんだよね……。母さん……」
この温かく大きな炎の前で、少し大きくなったお腹を抱えながら、私は息子の肩にそっと頭を乗せ、寄り添った……。
これが私の最後の選択だ……。
(了)
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