【 決断 】

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【 決断 】

 ある日の夕方、私が買い物から家に戻ると、また二階の寝室から父と若い女性の激しく愛し合う声が聞こえてきた。  買い物袋を床に置き、リビングのソファーへ座る。  今日はやけに長い。  でも、私は声が聞こえなくなるのを我慢して待った。  ――どれくらい経っただろう。  やがて、寝室から声がしなくなった。  私は、床に置いた買い物袋をもう一度持ち、玄関へと向かう。  そして、玄関の扉を開け、大きな音を立てて閉める。 『バタン!』  スリッパを履き、パタパタとわざと音を立てながら廊下を歩き、二階に向かって「ただいま~」といつもより大きな声を出す。  キッチンへ行き、買って来たものを冷蔵庫へ仕舞う。  しばらくすると、父とその若い女性は、二階から降りてきた。 「何だ、帰ってたのか、美琴……」 「ええ、パパ。今、帰って来たところ」  私はそう言って振り返り、笑顔を自分の顔に無理矢理、貼り付けた。
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