33人が本棚に入れています
本棚に追加
【 6つ目の選択 】
私が35歳になった時、6つ目の大きな選択をしなければならない時がやってきた。
父と一緒に暮らし始めて、23年を迎えた時、父に好きな人ができたんだ。
父はその女性に夢中だった。
夢中になるのは、分かる気もする。
その女性は、私よりも15歳も年下の20歳。
肌のハリ、髪の艶、声のトーン、彼女の若々しくかわいらしい笑顔。
どれをとっても、今の私では敵わない。
肌は衰えシワの数が増え、髪質も最近悪くなってきている。声も徐々に高い声が出ず掠れ、笑顔になるとあちこちに目立ったシワが寄る。
今の私では、とても彼女の若さには勝てる訳がない。
ある日曜日の夕方、私が買い物から帰ると、玄関には女性ものの靴があった。
またあの女性が来ている。
リビングの扉を開け中へ入ると、父とその女性はそこにはいない。
でも、どこからか声が聞こえる。
激しく愛し合う、男女の声が……。
私たちの二階の寝室から……。
最近は、父との関係はすっかりなくなっていた。
あんなに毎日、私を求めていたのに……。
父は今、彼女に夢中なんだ……。
私は、買い物袋をダイニングテーブルへ置くと、リビングのソファーに力なく座った。
父たちのその行為が終わるのをジッと我慢して待つ。
悔しい……。
悔しくて、涙が溢れてくる……。
私は、ソファーに座りながら、スカートを握り締め、瞳から零れ落ちる涙も拭かず、ただ耐えた。
でも……、
もう選択をしなければならない時がきたと思う……。
23年間、一度も後ろを振り返らず、ずっと走り続けてきた父との関係を、この時、全て断ち切る決断を私はしたんだ……。
最初のコメントを投稿しよう!