CASE1

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CASE1

江利賀亜嵐はとある地下室にて椅子に座っていた。廊下からヒールを履いた女性の足音がコツコツと響く。しばらくしてその女はやって来た。 その女性の名前は国馬沙羅、神奈川県組織犯罪対策室の室長だ。江利賀を真正面に見据えて座る。 「貴方が江利賀亜嵐ですね?」 「そうですが、この俺に何か用ですか?」 「貴方にやって頂くことがあります」 ――俺に何かあるのか? 江利賀は懐疑的な視線を国馬に向ける。国馬は冷静に告げる。 「貴方の配属先はUnder Dと呼ばれる所です」 「Under D…?」 江利賀は国馬の目を見据えていた。 倉木澪は神奈川県警警務部人事一課室に到着した。 そこで自分の荷物をまとめている。するとドアが開き1人の刑事がやって来た。その刑事は何処か倉木の事を知っているリアクションだ。 「お前だったか。元気してたか」 「はい」 その女刑事は志紋寿梨だ。彼女は倉木が左遷されていた警察学校で指導していた訓練生の内の1人だ。 「何で私が倉木さんの部下になったんでしょうか…?」 「私にも分からない。まぁ国馬さんが決めた事だ。何かあるんだろうな」 倉木は目を合わさずに言う。 時は流れ―― 国馬によって招集された鏡真珠は秘密裏に設置された建物にいた。鏡は辺りを見渡すが、その部屋は無機質な感じで何も感じない。 「ここはいわば一種の地下組織であり、警察の人間でもここの存在を知るのは限られたごく一部の人間だけしかいません」 国馬はパソコンを操作して、画面を表示する。 「この組織の名はunderground detective、通称Under D」 「この捜査っていつから始まってるんですか…?」 「もう既に運用を開始しています。今回の調査対象となる人物はこの人物です」 国馬は調査対象者となる人物を画面に表示させた。 とある旅館では既にunder Dによる調査が行われていた。江利賀は休憩を取っていた。そこに立ち退き業者がやって来ている。女将は契約書にサインを書こうとしている。すると江利賀が立ち上がり、立ち退き業者の男女の頭の上に冷水を浴びせる。そして契約書を握り潰した。 「何するんだ!」 「この服、いくらしたと思ってんのよ!」 江利賀は指で耳を塞ぐジャスチャーをして、聞こえないふりをする。そこに1人の男性がやって来た。 その男性の名は綺堂敬治。彼もまた『under D』の一員である。 「せっかくの憩いの場を潰されちゃ困るっすよねぇ」 「くっ…」 「さっさと退いてくれればいいの!」 するとまた、今度は2人の男性が銭湯にやって来た。瀞枝聖也、氷川祐一、彼等もまた『under D』の一員だ。 「どうせなんか威圧的な手法を使ったんだろう」 「こんな素晴らしい所、潰すわけにはいかないよ」 4人の大きな男に囲まれた立ち退き業者は「覚えていろ!いつかこの旅館絶対潰してやるからな!」と捨て台詞を言い残し去って行った。 立ち退き業者が去った後、女将は「ありがとうございます」とお礼を言う。 「いえいえ、お礼なんて」 「とりあえず、野郎4人でここのお風呂入りに行きますか?」 「おっ、いいね。国馬さん。終わったんで後の処理はよろしくお願いしますね」 『わかりました。こちらで処理しておきます』 電話を切った国馬は鏡に一連の出来事を説明する。 「今回、彼等の潜入先は老舗旅館『佐山屋』です。この旅館は立ち退き業者が相次いでやって来る等、トラブルが相次いでいました。しかしながら、under Dの一員が制止しました」 真珠は驚いたか声が出ない。国馬は淀み無く続けた。モニターに4人の人物を表示する。 「under Dのメンバーはこの4人、元公安警察官である綺堂敬治。元警察官であり、私が一番信頼している瀞枝聖也。週刊誌『エデン』の元記者である氷川祐一。そして正義感が強く犯罪者に対し強い憎しみを持つ江利賀亜嵐」 ――何故、彼が…? 真珠は疑念を抱く。 「今回、貴方の事は江利賀君から聞いています。一流のハッカーだと。そんな貴方にホワイトハッカーとして是非協力をお願いしたいのです」 「そんな事、私には向いていません」 「貴方の持つその正義感、今ここで試してみませんか?是非、彼等の助けになることを期待しています」 後日、その2人は逮捕された。4人は部屋にあるテレビでそのニュースを見ている。 「ほーらな。言わんこっちゃない」 「まぁ、俺達の活躍は表には認知されていない」 「所詮俺たちはダークヒーローですからね」 綺堂と瀞枝と氷川は呟く。 「その後は国馬さんが処理してくれますから、こんな楽な事は無いっすね」 「そんな事よりランボー。新しいメンバーが来るって言ったけど何か聞いてないか?」 「トロさん、その呼び名やめて下さい。俺は江利賀亜嵐です」 「まぁ、良いじゃん。似合ってるし」 「そんな事より、新しいメンバーは誰なのかな」 「江利賀君が推薦したって言っているけど」 氷川と瀞枝は転校生を待つテンションで言う。その時、国馬が真珠と共にやって来た。 「この小娘が新しいメンバー…?」 「おいおい、頼りなさそうだけど」 「ランボー、大丈夫なのか?」 3人は江利賀に小声で話しかけている。江利賀は鏡に笑顔を見せる。 「皆さん、この方がunder Dに新たに加入する鏡真珠です」 「よろしくお願いします」 「彼女にはunder Dをサポートするホワイトハッカー『パール』として活動していただきます」 綺堂は「こんな小娘、俺達の力になるのか?」と懐疑的だ。真珠も「悪かったですね」と顔を膨らませる。 「良いじゃないか。私からしてみれば娘みたいなもんだ」 「こう見えて彼女は壮絶な経験してますから」 「余分なお世話です」 皆が騒いでいるのを尻目に国馬はスマホを取り出して確認する。するとメールが一通入っている事に気が付いた。 「皆様、今回の案件が決まりました。是非、鏡さんも席に着席してください」 全員は各々席に座った。国馬はタブレットを操作してモニターを切り替える。 「今回、取り扱う事案はこの案件です」 モニターに表示されたのはとある大型ショッピングセンターだ。 「このショッピングセンター『ブリック』はご存じでしょうか?」 鏡以外の4人はピンと来ているようだ。 「ああ、確か覚えている。無実の老婆が泥棒扱いされて、居合わせていた警察官に意識がぶっ飛ぶまで絞められて亡くなっちゃった事件だろ?」 「それで、結局誤認逮捕扱いになって今に至るんだ」 「警察の怠慢はスクープ記事になりますよ」 江利賀は国馬に尋ねた。 「それで、このショッピングセンターを映し出した理由は?」 国馬はモニターの画面を切り替える。 「犯人と目されていた男を捜索するのが、今回のミッションです」 その画像は防犯カメラの映像だ。鏡は画像を見ながらツッコむ。 「これじゃ誰か分かりませんよ」 「それを貴方に解析して欲しいのです。ホワイトハッカー『パール』の力が必要です」 「いくら何でも私には――」 「荷が重たすぎるってか。それは悲しいなぁ。俺達は野郎ばっかりでうんざりしていたんだ。早く女性が来ないかって指折り数えて待っていたのに」 「おいランボー。いくらなんでも失礼だろう」 「そういうトロさんが一番待ち望んでいたでしょうよ」 「あれ、そうだっけ?覚えてないなぁ」 氷川の指摘に瀞枝は惚ける。鏡は一言「やります」と力強く呟いた。 「分かりました。ではこちらを渡しておきます」 国馬は鏡に何かを手渡した。 「これはunder D及び私が使用しているスマートフォンです」 鏡はそのスマホを手に取る。すると突然スマホが震え、驚いた。江利賀が鏡のスマホに悪戯をしたのだ。鏡は不審げな表情を江利賀に浮かべる。江利賀は満足そうだ。 「仕組みとしてはこんな感じ。じゃあよろしく」 「私は協力者に会ってきます」 国馬は部屋から出て行く。江利賀は独り言のように話す。 「協力者って、俺の知っている人物かもね…」 倉木は犯罪組織対策室に国馬によって呼び出されていた。 「貴方をここに呼び出した理由、それは何かお分かりでしょうか」 「監察官としての職務ですか」 「私が極秘裏に指揮している組織『under D』に協力する事がひとつ、そしてもう一つは江利賀亜嵐を監視することです」 「監視って…一体どういうことですか」 国馬はUnder Dのメンバーに関する資料を倉木に手渡す。 「その中でも江利賀亜嵐はとても危険な時限爆弾みたいな存在。貴方の父である倉木春影から言い渡されました。もしかすると人を殺すかもしれないと」 倉木は資料をめくる。そこには鏡真珠が掲載されていた。 「なんで彼女が…?彼女にはとても危険過ぎますよ」 「彼女はホワイトハッカーとして活動して頂きます」 「何かあっても責任は取れませんよ」 倉木は国馬を睨みつけていた。 その頃、江利賀と鏡以外の3人は現場にやって来ていた。 「ここが犯行現場になった場所だ」 綺堂は資料をめくりながら2人に語るように言う。 「女性の両手は、買い物袋を持って塞がっていた。女性がセルフレジを操作している最中、男性が突如セルフレジに乱入してきた」 「男性は突然女性の肩にぶつかり、突然叫んだ。そしてその叫び声が聞こえた後、他の客と同時に警察官がやってきた。どさくさに紛れて男はその場を去って行った」 「そして警察官の過剰な制圧行為。20分間拘束されていた」 瀞枝は大きな溜息をつく。そして語り始める。 「まぁ平たく言ってしまえば誤認逮捕って所か。警察の怠慢で起きたのだったら遺族がやりきれないわな」 「今、小娘に画像解析させているっすけど彼女は本当に役に立つんですかね」 すると突然、スマホが震えて鏡の声がした。 『聞こえてますよ。今やっていますから』 「はいはい。それで今どうなってるんだ」 『今の所、犯人は特定できてませんよ』 「了解。俺達が帰ってくるまでに頼むわ」 通信はそこで切れた。 「あの小娘、本当に役に立つのか?」 「まぁまぁ、気長に待てよ。まだ緊張してるだけかもしれないし」 「可愛い娘の成長を促すのも年長者の役目だからな。焦らず気楽に行こうじゃないか」 瀞枝は綺堂の肩に手を置いて微笑んだ。 江利賀は亡くなった女性の家に訪れていた。主人が対応しているが何処か冷たい。 「今更、何ですか…?事件に関してお話する事はありません」 「それが有るんですよ。あの事件に関して貴方の奥さんが無実だったという証明がね」 「証明できるんですか…?」 「ええ、証明して見せますよ。我々のチームは優秀なので」 部屋に4人が帰ってきた。綺堂は鏡に「特定出来たのか」と声をかける。 「ええ、約束通り特定しましたよ。このホワイトハッカー『パール』がね」 鏡はモニターを切り替えてその人物を映し出す。 「武田宗孝。警備会社『ジャルク』所属の私服保安員。要するに万引きGメンです」 「成程、まぁ立場を悪用したとしてもおかしくない」 「そしてこんな映像も手に入れたんです。こちらも再生します」 鏡は映像を再生させる。その映像には男性が女性を追っている映像だった。 「追っているって事は確実に狙っているな」 「小娘の癖に思ったよりやるじゃないか」 「チャラ男には言われたくないですね」 すると国馬がやって来た。倉木と志紋も同伴している。倉木は江利賀と鏡に向かって笑みを浮かべる。 「状況はどうですか」 「特定までは出来たって感じですね」 「というより、あの2人は誰なんですか?」 国馬は2人に視線を向ける。 「こちらの刑事は倉木澪。経験豊富であり父は元警察長官です。そして隣にいるのは彼女の相棒であり新人刑事の志紋寿梨です」 倉木と志紋は礼をする。 「ちょっと国馬さんよ。いくら何でも警察官に知られてはいけないじゃなかったのか」 「彼女達しかこのUnder Dの存在は知りません」 「純粋無垢な新人刑事に何やらせているんですか」 「彼女を推薦したのは私です。それが何か」 江利賀は手を叩き、話の話題を変える。 「とにかく、本題に戻りましょうよ。問題は武田だけじゃなくてこの制圧行為に及んだ警察官もターゲットじゃないですか?鏡、その人物を特定できるか」 鏡は指図通り警察官の顔を特定した。 「刈屋忠信。神奈川県警巡査部長ですね」 「流石。やっぱ深町さんに預けて正解だったな」 江利賀は国馬に向かってフッと笑みを見せる。 「じゃあ、この刈屋についてもマークしますか」 「ええ。では皆さん、引き続き調査を続けて下さい」 その夜、近くのバーに江利賀と倉木は共にいた。 「倉木さんがまさか俺たちの協力者だったとはね」 「まさか私も驚いたわ」 倉木はそう言いながら酒を一杯飲む。 「それで、俺を監視しているんでしょ。国馬さんの指示で」 「流石は名探偵アラン」 「そう褒めてもらって光栄ですね」 江利賀も酒を一杯飲む。 「そういえば、鮮見さんの娘が関わっていたが――」 「彼女はホワイトハッカーとして関わっています。まだ皆は疑っているみたいですけど、俺は彼女を信じてますよ。彼女の心に正義があるから」 「そう。それなら心強いわね」 鏡はまだ部屋に1人で作業していた。そこに国馬がやって来て声をかける。 「慣れましたか」 「いいえ」 「この組織もまだ試験段階。私もまだ学ぶことは多いです」 鏡は国馬に尋ねる。 「何故私をここに引き入れたんですか」 国馬は1つ息をつき答える。 「鮮見友里子」 鏡はその言葉を聞いた瞬間反応する。 「何故、私の母の名前を…?」 「警察組織において彼女の名を知らない人間はいません。彼女は生活安全課の刑事として尽力してくれました。もし彼女がご存命であればこの組織に関わってもらおうと思ってました」 国馬はこの組織を設立する前、鮮見にも相談を持ち掛けた事も付け加えた。 「貴方があの鮮見さんの娘さんとは思ってもいませんでした」 「…」 「鮮見さん譲りの正義感、期待していますよ」 国馬は扉を開けて退出していった。部屋にはパソコンを打つ音だけが響いている。 翌日、鏡は机でうつ伏せになって眠っていた。そこに江利賀達がやって来た。 「おい」 江利賀は鏡を起こそうとするが反応が無い。 「全く、無茶なんかしやがって」 綺堂は呆れ気味に言う。すると瀞枝は画面に音声解析の結果がある事に気が付いた。 「お嬢ちゃんもここまで調べたってことだね」 「再生してみますか」 氷川はパソコンをクリックし。音声を再生させる。そこには武田と刈屋の会話が記録されていた。 「なるほどね。誰を嵌めるかその下準備って訳だ」 すると鏡が突如として大きな声をあげて目を覚ました。 「え、ここどこ!」 「やれやれ、寝ぼけてんのか小娘。ここはいつもの部屋だぞ」 「すいません…」 「まぁここまで特定してくれたんだ。お手柄ってとこだろう」 鏡は大きな欠伸をしてパソコンに目線を向ける。 「武田と刈屋が誰を狙っているかそこが問題だ」 「もう一回あの商業施設に行くぞ」 『ブリック』にやって来た瀞枝と綺堂は武田の様子を観察していた。 「不審な様子は無さそうだな」 「そうですね」 そこに氷川もやって来た。氷川はカメラを手にしている。 「聞いたぞ。倉木さんが刈屋をマークしているって」 「はい。奴らが不審な会話をしていないかチェックしています」 その時、武田が携帯電話を取り出した。氷川がすかさず部屋にいる鏡に指示を出す。 「お嬢。武田の電話を解析しろ。俺は武田をマークする」 『了解です』 一方、倉木達も刈屋の動きをマークしていた。志紋は刈屋が電話に出た事に気づいた。志紋は声をかけようとするが、倉木が止めた。 「どうして、電話かけてますよ」 「泳がせた方が良いのよ。もしかしたら重要な手掛かりが残されているからね」 暫くして電話は切れた。倉木は刈屋に軽い会釈をして通っていく。 江利賀は武田の自宅の前まで来ていた。ピッキングツールを取り出して自宅のドアを開けた。江利賀は部屋に侵入していく。 江利賀は辺り一面を警戒する。そこにファイルがあるのに気が付いた。江利賀はそのファイルを開ける。 「気持ち悪すぎるな…」 江利賀はそう呟いて、写真を撮る。すると鏡から電話がかかってきた。 『江利賀さん、奴らの狙いが分かりました』 「丁度良かった。俺もそっちに戻る」 部屋に戻った4人は各々の状況を報告する。江利賀が口火を切った。 「彼の部屋からはバービー人形が見つかった。その中でも異質だったのが髪の毛だ」 「バービー人形…?」 鏡は訳が分からずキョトンとしている。氷川が助け舟を出す。 「要するに着せ替え人形の一種だよ。まぁ日本では数少ないけどな」 「何がどんな風に異質だったんだ」 綺堂が江利賀に尋ねる。 「あの人形の髪の毛、元ある人形のではない。あの髪の毛は人のだ」 江利賀がそう言った瞬間、部屋の中は静まり返ってしまった。 「え、何かおかしなことでも言いました?」 「いや、気持ち悪すぎてついていけないんだが」 瀞枝は背筋の凍る思いがしたようだ。 「要は、女性の髪を切って、その髪を人形の髪に充てていたという事だ」 「何だそりゃ」 「それで、商業施設組はどうだったんですか」 氷川は写真を取り出した。そこには武田が若い女性に声をかけている写真だった。 「万引Gメンの立ち位置を利用して女性を狙っていた…?」 「最低な奴ですね。会話を傍受してましたけど吐き気がしますよ」 鏡は怒り交じりにパソコンを操作して会話を再生する。 「ほお、中々生々しいな。小娘、もう止めて良いぞ」 綺堂の合図で鏡は再生をストップする。 「明日も奴はやって来るだろう。ならば相手の裏をかいて奴をとっちめる。その仕事をやってもらうのは――」 江利賀は鏡に視線を向ける。他の3人の視線も鏡を向いた。 「え、私ですか?」 「お嬢ちゃんしかいないだろう。この状況で扮装できるのは」 「明日、どういう結果になるか楽しみにしておくよ」 翌日、鏡は女子高生に扮していた。車の中で全員がモニタリングしている。 「おお、確かに現役女子高生」 『チャラ男に言われたくないです。失礼ですよ』 鏡はトランシーバー越しに怒る。それを瀞枝が宥めた。 「まぁ、怒るな。似合ってんだから」 『え、本当ですか?ありがとうございます』 「煽てには弱いんだな。とにかく、武田を徹底的にマークしろ」 『分かりました』 すると、モニターには武田が鏡に向かっている様子を捉えた。江利賀が鏡に指示を送る。 「作戦変更だ。鏡、そのまま連れ去られろ」 『はぁ?何をいきなり言い出すんですか?』 「奴らが犯行を行うとしたらスーパーの事務所だ。事務所のカメラの防犯カメラは恐らく映っていない。証拠を隠滅する為だ」 「じゃあ、恐らく奴らの狙いは密室での――」 「完全犯罪だろうな」 するとトランシーバー越しに鏡の悲鳴が聞こえた。江利賀は車を降りて行った。 事務所に連れられた鏡は武田に問い詰められていた。だが、鏡は無言を貫いている。 「お前これ以上喋らないんだったら、その髪の毛切り落としてやろうか!」 「勝手にすれば良いじゃん。どうせ防犯カメラにも映っているし、そんなことしたら警察に突き出されるわよ」 「減らず口を言いやがって、どうせこの防犯カメラになんてな映って無いんだよ!」 すると鏡は突然として笑い出した。 「何が可笑しいんだ!警察に突き出すぞ!」 「やれば良いでしょ。どの道、警察に突き出されるのはアンタだけど」 鏡はそう言い、ボイスレコーダーを机の上に置いた。その時、ドアが開いて江利賀が入って来た。 「初めてにしては上出来だ。あっさりと吐いちまったからな」 「何だ、お前!関係無いだろ!」 「俺達は特殊捜査員だからな。何処で何をやろうが勝手なんだよね」 すると、武田は鋏を取り出して鏡を人質に取った。 「それ以上近づくなよ!この女の髪の毛を切るぞ!」 「やろうとしてる事がショボいなぁ、普通は刺す所だろ。ま、甘く見ない方が良いけど」 「何だと?」 武田が動揺した隙を突いて鏡は足を踏みつけた。武田は痛みに悶絶している。 「ほらな。甘く見るなと言ったでしょうが」 江利賀は武田の腹を目掛けて思いきり蹴りを入れた。武田はそのまま失神した。江利賀は鏡に向かってサムズアップする。 「良くやったな」 「はい」 一方、倉木と志紋は刈屋に逮捕状を突き付けていた。 「な、なんだ…?急に」 「貴方に逮捕しに来た。それ以外に理由がありますか」 「私は何も知らない!」 刈屋はその場を去ろうとする。今度は倉木が目の前に立った。 「私は警察を取り締まる警察官なんで、先に言っておきますが異論は認めませんよ」 倉木は刈屋の両手に手錠をかけて連行していった。 翌日、武田と刈屋が揃って逮捕されたニュースが流れていた。Under Dの面々はテレビで見ている。 「倉木さんから聞いたんですけど、お互いに罪を擦りつけしている様ですね」 「あの髪の毛、科捜研に解析してもらったけど本当に人の髪の毛だったらしい」 「本当に気持ち悪いな」 そんな中、鏡はパソコンを操作している。氷川は不思議に思い声をかけた。 「いたのか、お嬢」 「ええ、私もUnder Dの一員ですから」 その言葉に全員が驚いた。 「マジ?てっきり今回だけのサポートだけだと思っていたけど」 「私は大歓迎だぞ」 「国馬さんに言われた様に自分の正義を信じてみたいです」 鏡の口調は力強い。 「ようやくその気になったか。国馬さんも喜ぶだろうな」 その国馬は県警の屋上に来ていた。そこに倉木がやってきた。 「何故、Under Dを創設したのですか」 「…」 国馬は何も答えない。 「志紋寿梨。彼女の経歴を調べました」 「それで何かわかったんですか」 「ええ。ですがこの場では何も言わないでおきます」 物陰からは志紋がこっそりと見ている。志紋は2人の少女が映っている写真を見て呟いた。 「栄美ちゃん、貴方は今どこで何をしているの…?」 15年前―― 蛾濠栄美は両親が警察官によって連行される所を見ていた。蛾濠は泣きながらその姿を見ていた。 そこに志紋がいた。泣きじゃくっている蛾濠に背を向けるようにしてその場を去っていく。
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