47人が本棚に入れています
本棚に追加
紅掛花色 キミと空
春はあけぼの
やうやう白くなりゆく
山ぎはすこし明かりて
むらさきだちたる雲の
ほそくたなびきたる
「はっ はっ はっ… 」
近所の公園を抜けて、いつもの高台へと向かう。
白々と明けて行く夜から朝へ変わるほんのわずかな
瞬きをすれば見逃してしまうほどに…
ほんの一瞬。
朝靄に霞む山から立ち昇る雲が
紫色に細くたなびく。
「すーーーぅ… … … はっ」
深く空気を吸い込み、小さく息を吐く。
早朝、この朝日をこの高台から眺めるのが日課。
季節によって空の色は様々変化するけど、春が1番好きだ。
1000年も昔に清少納言も同じ空を見上げていた。
そして、同じように感動したんだ。
この紅掛花色に染まる
春の空に…
そんなことをぼやっと思いながら、徐々に明るくなって行く空をただただ眺める。
「 … … キレイ… …」
「っ!?」
しんっとした空間に、ふいに少女の声が溶け込む。消え入りそうな、微かな、それでもはっきりとした声だった。
最初のコメントを投稿しよう!