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円は真っ正面から惜しみない愛情で包んでくれる。
それを受け入れる自信を持てるかどうか…それは自分の弱さだと感じる。
円が近づけば近づくほど、円の存在が自分の中で大きく大きく膨らむほど…怖い。
いつか、いなくなってしまう。
ーー愛してるって、言ったくせに…
「あら!?梨華ちゃん!?どーして?」
玄関先で小雪の声が聞こえる。
ーー今、梨華ちゃんって…?
慌ててベッドから起き上がり、玄関へ向かった。
「こんばんわ~♪突然遅くにごめんなさい」
にこっといつもの明るい笑顔で梨華が言う。
「あらあら?さっき、円が梨華ちゃんがうちに帰ってないって探しに出ちゃったわよ?」
「え!?何で?」
「りっくんから、連絡も着かないって電話が来たって言ってたけど…」
春菜は小雪と梨華が玄関先で話している姿を認め、ほっと胸をなでおろす。
「梨華ちゃん。よかったぁ…」
「春菜さん?なになに?そんな心配かけてる感じ?あちゃ〜…ケータイの電源落としてただけなんだけど…」
「せっかく来てくれたのに行き違いねぇ。今円に戻って来る様に連絡入れるわね」
上がってちょうだいと小雪に促され靴をぬぐ梨華は、いやに大きなキャリーバッグを引いている。
「今日は円じゃなくて、春菜さんに会いたくて来たんだ」
「私?」
「うん♪春菜さんのお部屋にお邪魔してもいい?」
「…どうぞ?」
梨華が自分にどんな話があるのか。恐らく円のことだろうが、春菜が円について言えることは何もない気がする。
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