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「あは…参ったなぁ…」
伝う涙を手のひらで拭う。
「梨華ちゃん…暗闇って平気?」
「…え?」
突然何を聞かれているのかと、梨華が首を傾げる。
「私は、怖い…。ひとりぼっちで誰もいなくて…呼んでも呼んでも…返事がない… …円くんは、私の光なの…」
「言ってることが矛盾してる。円に頼ればいいんじゃないの?」
「怖いよ… …光がいつまでも照らしてくれるって、確証がない。いつか突然消えちゃうのかもしれない…そのいつかに怯えるのも、怖い…。」
「だから、弟なんて言ってるの?信じてた光が突然消えるくらいなら、心構えができるもんね?…でもそれって、結局春菜さんの光にはならないんだよ?本当に、それでいいの!?」
「… …」
言葉に詰まる春菜に、追い打ちをかける様に梨華が言う。
「姉と弟じゃ成り立たない…男と女でやっと、一生涯の光になるんだよ。円が別の誰かのところに行っちゃったら、春菜さんはどうするの!?また暗闇に戻っちゃう?だったら…円を信じてよ。…あいつ約束とかほとんどしないけど、言ったことは必ず守るよ!」
『俺は、どこにも行かない…ずっと』
円の声が脳裏に響く。
あの瞳は決して嘘を付かない。
信じられないなんてことは、あり得ないはずだった。
コンコン
「先輩?梨華いる?」
ノック音と共に呆れた様な円の声。
「あ、うん!」
「はぁ…入ってい?」
「どーぞ」
慌てて涙をぬぐいながら答える。
「おー…いたわ」
円、次いで律が顔を覗かせた。
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