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伝えたい想い
新幹線から電車に乗り換え、1時間ほど走ったのだろうか。
徐々に景色に緑が増えてくる。
「円くん…ごめんね?ついて来てもらって…」
「それ何回目?俺が来たいから来てんの」
「…うん。へへ…」
力なく微笑み、揺れる電車の窓の外へと視線をやる春菜の瞳の奥には、不安の色が見え隠れしていた。
「…5年ぶり…」
春菜がぽつりと呟いたところで目的地を告げるアナウンスの声が電車内に響いた。
子供の頃の記憶で、全てを明確には思い出せない。しかし、この街は変わらないと、そう感じた。
駅前の大きな花時計。
その奥の噴水に、商店街へと続くアーケード。
その場に立ち尽くし風景を眺めると、あの頃の感覚が、徐々に取り戻されて行く。
「… …」
「先輩?大丈夫?」
「あ…うん。」
心配そうに覗く円の瞳。その瞳を見るだけでほっと落ち着くのだから、不思議だ。
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