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「ん…」
「・・・?」
目の前に差し出されるその手に、荷物はハンドバッグほどしかないが…と小首をひねる。
「手… …ダメ?」
やや拗ねたようによそを向いて言う円はあいかわらず可愛く、春菜もつられて赤面してしまう。
「は、はい…」
そっと、差し出された円の手の平の上に自分の手を重ねる。
ーー長い指…意外と、手…大きい… …
「やった♪」
ふっといたずらに笑う円にドキドキする。
すでに自分の円へ対する気持ちが何なのか…気づいていた。
ただ、あと一歩の勇気が持てないでいる。
言葉にするには…乗り越えたい壁があった。
そこからは聖司に書いてもらった住所と地図を元に、目的地へと向かう。
行く先々で思い出す、懐かしい景色。
「…無理すんな?」
「うん…大丈夫。円くんがいてくれるから…平気」
にこっと笑う春菜に暗い影はない。
戸惑いや不安はあるのかもしれない。
緊張した面持ちではあるが、どこかすっきりとした表情をしている。
「… …そ」
きゅっと春菜の手を握る手に力を込める。それに応えるように、春菜も握り返す。
ただ手と手が繋がっているだけで、春菜は何十倍も何百倍も強くなれる気がした。
足を止めることなく前へ前へと進んで行けるのは、円の存在のおかげ。
「円くん…ありがと」
「… …もう着くよ」
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