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見覚えのある民家を抜けて、大きな公園を横切る。
平和な風景が広がり、忘れかけていた当時の日常が今もなお当たり前のように広がっていることに、なぜだか安心した。
「あー!手つないでる♪」
「カップルだぜ~♪」
子どもたちの冷やかしをいちいち間に受けながら進み、いよいよ目的地目前となる。
「私ね…お父さんとお母さんに会ったら、伝えたいことが沢山ある…」
「…ゆっくり、話したらいいよ」
ふわっとほほ笑む春菜は、きっと大丈夫だ。
その瞳の奥に、あの頃の春菜の姿はなかった。
デザイン住宅が立ち並ぶ中に、まるで庭園のような存在感でそこはあった。
キィ…
小さな音を立てて鉄格子が開き、足を踏み入れると神聖な空気に変わった。
春菜は立ち止まることなく歩みを進め、一つの墓石の前に立つ。
そして、言った…。
「お父さんお母さん…ただいま」
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