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ここから空を眺めるのは毎朝の日課であり、これほどの早朝に人に出会うことはほとんどない。
ましてや、共に空を眺めることなど…初めてだった。
声のした方向、自分からわずか10メートルほど隣にいる少女を振り返る。
共にうっすらと紫色に染まって行く雲を、空を眺めていた。
…と、思っていた。
しかし、そう言った少女の大きな漆黒の瞳は明らかに…自分を写していた。
「…ぁ、の…」
少女の潤んだ大きな瞳にじっと凝視され、反応に困る。
「キレイな、紫色ですね」
「あ、空… …」
「いぇ。…あなたの、瞳が…」
ふわっと、空に浮かぶ雲のように美しく柔らかい笑顔で、少女はそう言った。
「… …ども」
そう一言残し踵を返す。
そしてそのまま、少女に一度も視線を合わせることなく、その場を後にした。
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