紅掛花色 キミと空

5/9
前へ
/153ページ
次へ
「あ、あの!…円、くん…!!」 颯爽と帰路へ向かう円の背後から、少女の声が呼び止める。 反射的に振り返る円の視線の先にいたのは、見たことのない、見覚えもない少女だった。 制服のリボンの色から、3年だということは分かる。 ピンク色のラッピングされた小さな包みを持ち、頬を赤く染めている。 「…何?」 無愛想にそう返事をする円に、少女は慌てて手に持った包みを差し出した。 「あ、ぁの!これ、今日の家庭科で作ったんだけど…よければ、もらってくれないかなっ!?」 「いらない。」 「・・・ぇ…?」 少女の決死の告白を、表情をピクリとも変えることなくさらりと断り、そのまま再び帰路に着く。 そのやり取りを隣で終始見ていた律は大きくため息をつき、ビシッと円にデコピンした。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加