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 美奈子がこの会社へ新卒として入社してから早七年が経とうとしている。三十を目前にし、そろそろ結婚を考えてもいい頃だが、今日のように残業をすることが多いこともあり、出会いが全くなかった。 「ただいまー……」  電車に揺られ三十分。都心から近いが、古びたアパートの一室が美奈子が住む部屋だった。  誰もいない部屋に入り、鍵を閉めると、そのままベッドにダイブした。  生まれも育ちも田舎の美奈子は、高校生になったときキラキラした都会に憧れた。テレビで見る都会では、流行に敏感な人達がいっぱいいて、可愛いものがたくさんそろっている。そんな都会で働きたかった。そして今、上京し一人暮らしをしている。
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