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 ――ピンポーン。  家族三人が集まり、お昼ご飯として、晴美がさきほど収穫してきた新鮮な自家製白菜を使ったシチューを頂く。  もちろん白米も自家製で、今年度に収穫したものである。シチューはまだ寒いこの季節にはちょうどよく、食べると体の芯から温まる。また石油ストーブをつけているため、部屋中が温かいので、体の内側からも外側からも温かい。  そんなのんびりとした昼食時に、来客を知らせるチャイムが鳴った。 「あら? お昼に誰かしら?」  晴美が手を止め、パタパタと足音を立てながら急いで玄関へ向かう。 「あらぁー! どうもー。元気にしてた?」  玄関で来客を迎えて、軽快に話す晴美の明るい声が家中に響く。昼食をとっている部屋の扉は閉めてあるが、それでも晴美の声はよく聞こえた。 「最近あんまり見なかったけど、忙しかったのかしら?」  相手と何かを話しているようだが、シチューを食べている美奈子の耳には、晴美の声しか聞こえない。来客の声が小さいようである。 「ああ、そうそう。お母さんから聞いたかも知れないけど、うちの子が帰ってきたのよ。話でもしていったらどうかしら? 久しぶりでしょう? 美奈子ー! ちょっと来なさーい!」  まだ食事中だというのに名前を呼ばれ、しぶしぶ立ち上がる。誰が来ているのか分からないが、口周りをティッシュで拭いてから、晴美に呼ばれた玄関へと向かった。 「あ」 「よう」  玄関にいたのは、連絡をしてきた匠だった。
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