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 黒髪で背の高い匠の姿は、成人式の時よりもかなり大人っぽくなっていた。  まだ寒いので、真っ黒の防寒着に身を包んでおり、全身が黒づくめになっている。  そんな匠は美奈子の姿を見て、軽く手を振る。 「しばらくお二人でどうぞ」  晴美は二人を玄関に残して、戻っていってしまった。  騒がしい人がいなくなり、シンとした時間が過ぎる。先に沈黙を破ったのは、匠だった。 「久しぶりだな。その格好……手伝いでもしてるのか?」 「あっ! そ、そうだよ? 手伝いで……手伝いだから着てるんだからねっ!? 私服じゃないからね!?」  今になって、晴美のおばあさんのような作業着を着ていたことを思いだした。しかも、田起こしをするだけであったので化粧もしていない。  すっぴんで人に会っているのが恥ずかしくなり、慌てて顔を手で隠す。だが、耳が赤くなっていることは隠せなかった。 「そんな恥ずかしがらなくても……俺はいいと思うけど」 「もう……絶対心の中で馬鹿にしてるでしょ?」 「そんなことないって。家の手伝いするなんていいことだろ?」 「まあ……他に仕事がないからね」 「ああ、辞めてきたんだって? うちの母さんから聞いた」  やはり美奈子が仕事を辞めたことは、母親同士仲がよいことがあって伝わっていたようである。今更あれこれ言うことでもないが、口の軽い母に秘密を漏らすべきではないと感じた。 「色々あってねぇ、ほんと色々と。たっ……そっちは何してるの?」
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