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 本人を目の前にして、年齢的に恥ずかしくなり、昔からの呼び名である「たっくん」と呼ぶことができなかった。 「……市役所。地味だろ?」 「ううん、そんなことないじゃん。公務員、安定、大事」 「まあ、それはある」  会話が途切れてしまった。  二人の間に再び沈黙がやってくる。  しかし、今度は美奈子がそれを破った。 「そうだ、何しにうちにきたの?」 「おっと。そうだった、忘れるところだった。回覧板を持ってきたのと、手伝いのこと聞きに来た」  小脇に抱えていた回覧板を美奈子に手渡す。  匠の家は、美奈子の家から近い。なので、回覧板の順番が前後であった。  回覧板では地元の広報誌や、公民館のお知らせ、ゴミ収集のお知らせが回ってくる。見ても見なくてもそこまで重要ではないものが多い。 「ありがとう。で、手伝いってなに?」  回覧板を受けとりつつ、美奈子は首をかしげた。 「俺、お前がいない間、おまえんちの作業手伝ってたから。今年はどうすんのかなって」 「そうなの!? 知らなかった!」  初耳だった。  田起こしなどは一人でもできる。しかし、種まきや田植え、稲刈りを賢治と晴美の二人だけでやるには少々骨の折れる仕事である。  美奈子は全て二人でやっていたのだと思っていた。まさか幼なじみが手伝っていたとは考えもしなかった。 「それはそれは……お手伝いありがとうございます」  今まで手伝ってくれていたことに感謝し、美奈子は深々と頭を下げた。
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