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「だって本当のことでしょう? 匠くんの方が長く手伝ってもらってるから、美奈子より頼りがいあるわよ」
「それもそっか。んじゃ、よろしくねー」
「お、おう」
晴美に怒ったかのような態度をとった美奈子は、晴美の言葉に納得するとコロリと態度が変わった。二人のやりとりを見ていると、仲のよい親子であることがよく分かる。匠は、自分の家とは違うなと思っていた。
「美奈子。あんたは早く仕事を見つけなさいよ!」
「わかーってるって」
「まーた、適当にしか返事しないんだから。ねぇ、匠くん。いい仕事あったら、美奈子に紹介してくれる? この子、ろくに仕事を探してもいないのよ」
「さが、してる……よ?」
「その言い方! 探してないでしょう? お母さん、知ってるんだからね。昨日は起きてから寝るまでドラマ見ながら号泣して、一昨日は映画見ながら号泣して。いつも仕事なんて探してないものね」
「わーわーわーわーわー! そういうの人前で言わなくていいから! 後でゴタゴタ聞くから!」
晴美が口を開くと、美奈子の生活がボロボロと明かされる。慌てて止めに入るも、晴美は黙ろうとはしない。
「俺でよければ仕事、探しておきますよ。これでもツテはあるんで」
「あら、本当? だって、美奈子。頭を下げなさい」
晴美が頭を下げながら、美奈子の頭を強引に押して下げる。
二人に頭を下げられた匠は、苦笑いをしていた。
「俺に出来ることならしますよ。いくつか仕事を絞ったら、彼女に連絡しておくんで」
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