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「ありがとうねぇ。何から何まで、本当助かるわ」
「いえいえ。それじゃあ、俺はこれで失礼します。お昼食べてる途中だったでしょうし。お邪魔しました」
ペコッと頭を下げてから、匠は帰って行った。
扉が閉まったことを確認してから、晴美は美奈子の顔を見てニヤニヤと笑う。なぜそのような顔をするのか分からず、美奈子は晴美に問う。
「なによ?」
「匠くん、いい子じゃない? 結婚したらどうかしら? 何でも出来るし、お母さん大賛成」
「はぁ!? 何それ! てか、結婚って。たっくんは幼なじみですー」
「たっくんって呼ぶほど仲がいいじゃない。幼なじみと結婚なんて、少女マンガみたい」
「読んだことないくせによく言うよ」
「読まなくても何となくそんな気がするのよ」
「あー、はいはい」
昔から知っている匠と結婚を勧められても、想像ができない。久しぶりに会ったので、懐かしいとしか思っていない。
誰にも恋愛感情を持ってていない美奈子は、まだ結婚について考えるよりも、仕事を探さないといけないなと思っていた。
昼食後、美奈子が再び田起こしするのかと思いきや、トラクターに乗り込んだのは賢治だった。
「お父さん、私はやらなくていいの?」
トラクターの扉を閉める前に、声をかける。
「いい。お前がやっていると、多分終わんない。残りは俺がやってくる」
「そう……足は平気なの?」
「力仕事じゃなければな。アクセル踏むくらいならたいしたことない」
「へぇ。じゃ、いってらっしゃーい」
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