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美奈子の会社では、終業時間は夕方五時となっている。終業時間には音楽まで鳴り、残業せずにそこで帰ることを促す意味で流れるが、その時間に帰宅できるとは限らない。その時間に帰ることができたのは、覚えている限りでは二回ほど。
一度目は入社初日。入社式と説明を受けた日。
二度目は上司が急病で休んだ日。たまたま金曜日だったので、上司は土日で体調を取り戻して、月曜日に復帰した。
それ以外の日――つまり毎日、二時間の残業を行うことは当たり前だった。「上司が帰らないと、部下が帰れないだろう?」と言って、上司は毎日定時に退社していく。自分の仕事を部下に押しつけているから、定時退社できていた。そのダメな上司のせいで、部下の仕事が増え、定時に帰ることは叶わないことを本人も、更に上の立場の人達ですらも意識していない。
今日もその上司にコピーしといてやら、発注しといてとあらゆる仕事から雑務までを押しつけられた。
とどめは「明日の朝使う資料を作っといて」だった。明日使うものを、終業時間直前に押しつけるので残業せざるを得ない。何とか終わらせた結果、この時間となってしまった。
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