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バス停で少女と話してからも、何も変わることはなかった。
今までと変わらず、時々、どうでもいいような会話を、生産性のない話を、自分に関わらない言葉を、交わすだけ。
そうして、数ヶ月が過ぎ去り、夏になった。
そして、僕は気が付いた。
また、気付いてしまった。
学校内で彼女が笑っているとき、誰かと話しているとき、教師と話しているとき、読書をしているとき、授業を受けているとき、僕と話しているときも、全部。
全て。
よく見れば、色がないのだ。
感情が、読み取れないのだ。
楽しいと言っても、
悲しいと言っても、
怒っていても、
喜んでいても、
全て嘘で、仮初のものだ。
模範的な少女を、
優しくて、明るくて、面白くて、いい子な少女を、
演じているだけだ。
まるで僕の様じゃないか。
楽しくなくても楽しいと言えば、
悲しくなくても悲しいと言えば、
怒ることをしなければ、
喜ぶふりをしていれば、
面倒事に巻き込まれないから。
嫌いだとか、鬱雑いだとか、憎いだとか、そういう感情に流されないから。
気になった。
少女が他人を欺いている理由が。
僕の様に、人付き合いが面倒だから、とかいう理由ではないように思えたから。
だから僕は、少女に問いかけた。
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