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夏休みも近づいてきた暑い日。
たまたま、課題が終わらず、遅くまで居残っていた僕は再び。
古びたバス停に立つ、少女を見つけた。
息を呑む。
「前も……此処にいたよね、君」
そう言って、声をかける。
少女はゆっくりと振り返る。
また、諦めたような笑みを見せる。
「また見つかっちゃったよ。カイくん、帰り遅いね」
「まぁね。また海でも見てたの?」
「そう。学校終わってから、ずっと」
「飽きないわけ?」
「全然? だって、海は刻一刻と変化してるんだよ? 同じときなんて、一度たりともない」
「痛々しい物言いだな」
「ちょっと気取っちゃった」
と、笑う。
ここまでの会話は、学校でしているのと変わらないような内容だった。違うのは僕の態度と、口調くらいなものだ。
「じゃあ、私はそろそろ帰るね。バイバイ!」
そう言って。
立ち去ろうとする少女。
前と同じならば、少女を見送り、僕も帰路について終わりだった。
でも、僕は気付いてしまっていたから。
「なぁ」
短い呼びかけに立ち止まる少女、口を開く僕、全てスローモーションに見えて。
フラッシュバックするあの日の光景、酷く吐き気がする。
また夢か、また夢なのか、もう厭だ、嫌だ、厭だ、嫌だやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!
叫び声、虚しく響いて。
「なんできえたいの?」
問いが漏れた。
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