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夏休み前になっても、転校生という名を背負う僕の人気は衰えなかった。
質問攻めを食らう事は減ったが、代わりに心底どうでもいい会話に延々と付き合わされていた。
疲れた。面倒くさい。全員呪ってやろうか。
なんてブラックなことを考えつつも、面には出さず、帰りの準備をする。
「カイ、カーイ!」
隣から声をかけられた。
普段なら無視を決め込む相手ではあるが、今は学校内だ。
仕方なく僕は横を向く。
「なんですか?」
笑みをたたえながら、目で訴える。
『話しかけるな、呼び捨てもやめろ』
と。
しかし、少女は伝わっているのかいないのか……おそらく前者だが、構わず続ける。
「敬語、なんだねぇ……」
したり顔で呟く少女。
あの一件以来、この少女は何かと僕に絡んでくるようになった。無論、学校外では無視している。
「それで、どうしたんですか?」
怒りを外側にあらわさないよう、深呼吸をする。
「もうすぐ夏休みだね~」
「そうですね」
「何か予定はあるの?」
「特にこれと言ったことはないです」
「ふぅん……そうなんだ」
含みのある笑みを浮かべてくる少女。
なんだこのつかみどころの全くない会話は。何の意味があるんだ。
「あ、そうだ」
「はい?」
「今日一緒に帰ろうよ」
「遠慮しておきます」
即答すると、少女は不満げに口を尖らせた。
少女が何か文句を言おうと口を開いたところで、教師が入ってきた。
全く、その顔も演じた物だろうが。
どうせ。
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