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海の星
ガタンッ!
机が揺れる。
読書をしていた僕は本を閉じ、顔を上げた。
途端に、耳に、頭に、休み時間の騒音が戻ってくる。
「あ、悪い。ぶつかった」
と、クラスメートである男子が謝ってくる。
どうやら、ふざけ合っていた男子が机にぶつかってきたようだった。
「いや、大丈夫」
と、それだけ言って、僕は再び本に目を向ける。
文字の羅列に目を走らせる。
折角いい感じに意識が本へと飛んでいたのに、邪魔が入ったせいで引き戻されてしまった。
休み時間にひとりだからと言って、友人がいないわけではない。
ただ、この短い時間に、わざわざ席を立って話しかけに行くほど、一緒に居たいと思えるほどの仲ではないだけだ。
相手にとっても、それは同じだろう。
それを悲しいと思ったことはない。
悲しくもないし、苦しくもない。
ただ、つらいと思うだけ。
ああ、駄目だ。
周りの音が邪魔で、本の内容が一切頭に入ってこない。
僕はそっとため息を吐き、本をしまう。
ふと、窓の外を見ると、暗い雲が空を覆っていた。
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