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吸血鬼と死人
で、結局本当のところ「復活の呪文」なんてあるの?
あったわよ。昔ね。
今は?
知らないわよ。
誰かが信じ続けて残していれば、何処かに転がっているんじゃないの?
そういうもん?
そういうもんよ。
そもそも、貴方と私じゃすんでいる世界が違うもの。その「復活の呪文」を唱えて何が起こるかなんて知らないわ。
私はファンタジー。貴方はホラー。
世界のルールそのものに違いがあるの。おわかり?
おわかり。そうか、僕の世界には吸血鬼なんていないもんね。
死んだ後も狂わずにいられるなんて、どんなニンゲンよ。
どっちにしてもさ。復活させるならせめて楽しかった思い出までで終わらせて欲しいよね。
ふわあ。
そろそろ僕、眠り直すよ。夢の中で桜の姫様が待っているんだ。
あら、それはいいわね。
じゃあ、私も眠ろうかしら。
それがいいよ。
話せて楽しかった。
ええ、私もよ。
おやすみ、吸血鬼お嬢様。
おやすみなさい、眠りウサギ。
よい夢を見なさい。
二人のメインキャストは居るべき世界へと戻っていった。
彼らが語らっていた小さな部屋を灯していたろうそくが、ふ、と誰によってか静かに消されたようだった。
此れにて終演。
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