復活させないで

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復活させないで

ふわぁ。 ねむいねむい。 ああ、ごめん。最近夢見が悪くてね。 ふぅ。よし。じゃあ、僕の話を始めようか。 君たちは知ってる? あれだよ、あれ。ええっと、何て言ったっけ? そうそう。何でも復活させられる呪文。 「復活の呪文」。 昔流行ったよね。ゲームの中で死んだら、生き残ってる仲間がそれを唱えるんだ。教会とかお寺とかでさ。 その呪文が失敗したら、残念だけど、諦めるしかない。 死んだままならまだいいよ? でも、中途半端にその呪文が効いていたらゾンビになって起き上がる。そしたら仲間は全滅。 戻ってきて欲しい仲間に食い殺されちゃうんだ。 バカだよね。呪文を唱えた人。 僕、どんなゲームでもそれだけは使わないんだ。だって、死んだら負けでしょ? 死んだら終わりなんだ。生き返るなんてありえないんだよ。 それが、たった一回の人生っていうものでしょ? 誰かが復活させてくれるなんて思ってたら、甘えちゃって全力で生きられない。次があるって思っちゃうと、たった一回しかないチャンスを無駄にしちゃうんだ。 失敗してもいいんだよ。僕なんて失敗だらけさ。 スキナヒトニスキトモイエナイデ ゼンブオシツケテ なかなか来ないチャンスを待つことだって必要だよ。今だ! っていう時に力を出せなかったら、それってすごくかっこわるくない? アノヒイケニオチタイヌヲタスケタミタイニ その時まで生きてないとさ、そこから先に落ちてるはずのチャンスを捨てることになっちゃうんだ。 せめてそれに出会えるまで生きていようよ。頑張ってさ、生きることにしがみついていようよ。 ボクガデアッタチャンスハイヌトノデアイ (わん! わん!) もし本当にさ、現実に死者を生き返らせるっていう呪文があったとしたらね。おかしくない? 何で毎日何処かしらでお葬式が行われているの? はっきり言ってね、お葬式って面倒だよ。色々準備して、体を燃やして、色々やって、灰やら骨やらを埋める。お金だってかかるよ。 ごめん、不謹慎だったね。 でもそう思ってる人だっていると思うんだ。寂しい、悲しい。それと同じくらい面倒だな、手続きどうしよう、費用なんてないよ。そう思うんだろうな。 僕自身、死んでから何年も放置されてきたからそう思うんだけどね。 僕ってさ、実はとっくに死んでいるんだ。知らない人に殺されて、何処かにぽいっと棄てられちゃった。 でも、あたかも生きていますよって見せていた方が僕たちには都合がよかった。 何のことかわからなくてもいいよ。ヒントは僕の初恋の人に残してきた。彼ならきっと、ううん。絶対に気づいてくれる。僕の亡骸を見つけてくれる。 ナンネンタッテモボクハマチツヅケルヨ まあ、つまりさ。 この世には死んだ体を生き返らせる方法なんてないと思うんだ。 どんなに不思議な魔法を使ったって、ゾンビや人形にならない限り死体は動き出さない。そこには心なんてないよ。 一回壊れてなくなった心は、どんなことをしたって動かない。 じゃあ、死んだはずの僕がどうしてこう語っているのか。 簡単だよ。 僕の体は死んでるけど、心は辛うじて生きている。それだけなんだ。 ホントニソウカナ 僕の心は、「桜ヶ原の七不思議」という怪異に引っ掛かっている。あの世とこの世の境。そういうものかな。 もしかしたら、その「復活の呪文」は僕みたいな中途半端なモノにこそ効果があるのかも。 死んで落ちたら引き揚げるのは難しいでしょ? でも、途中で引っ掛かっているのを引き揚げるのは意外とできる。結構簡単なんじゃないかな? アアソウカ ダカラダネ
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