望みに向かって

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 僕は走り出した。妙に影が薄かった扇を思い出して全速力で走った。勢いをつけ過ぎて扇のマンションのドアに激突して派手な音が響く。ぶつけた痛みで廊下にしゃがみ込んでいるとそーっとドアが開いた。  「……なにしてんの?」  「扇! 生きてた、生きてたぁ……」  僕はボロボロ泣き出した。とても、不安だったから。  扇は泣いている僕を立たせて部屋へ(いざな)い、世話を焼きながらのんびりとした口調(くちょう)で言った。  「トオルは、勘がいいよねぇ……。最近、何があったとか、原因めいたもの全然ないんだけど死にたくなるんだよ。困ったなーとは思っているんだけど、とりあえず眠っていると死にたくならないからそうしてるんだけど」  「や、やっぱり大丈夫くないじゃないか!」  僕は目についたトランクに片っ端からものを詰め込んで、扇にコートを着せて外に連れ出した。勝手知ったる友の家。鍵を閉めて、ぐいぐいと腕を引いて走りだす。
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