望みに向かって

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 されるがまま走らされながら扇は首を傾げた。  「どこ行くの?」  「僕の家」  「えぇ……彼女さんは?」  「連れてきていいって言われてる!」  「お邪魔虫(じゃまむし)は嫌だな……」  「僕は! 扇を独り(ひとり)にしておくのが嫌なの! うっかりで死なれたら笑えないよ! 僕は彼女も(しんゆう)もなくす気はないから!」  しばらく黙り込んだ後で扇は気の抜けた笑顔で呟いた。  「世界がみんなそうだといいのにねぇ……」  「え?」  「真っ暗な方に行きそうになった手を引っ張って走ってくれる人が当たり前にいる世界。とりあえず、トオルがいる前で死のうとは思えなそうだから」  「なんだよ、それ……扇の世界は明るいんだ、ばーか!」  少し先にある信号の色が赤から青に変わった。僕は強く扇の手を握り直して走り出す。止まるもんか。赤になる前に渡ってやる。大丈夫な場所に行くまで止まるもんか。
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