望みに向かって

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 僕は挨拶(あいさつ)もそこそこに走り出した。電車で駅5つ(はな)れた場所に住む恋人(こいびと)のところへ。彼女は強がりで、我慢(がまん)強くて、優しくて、でも自分に鈍感(どんかん)だ。  気になっていた。最近、「大丈夫(だいじょうぶ)」としか聞いていない。「大丈夫?」とたずねて、「大丈夫」としか言われていない。合鍵(あいかぎ)(にぎ)りしめて、ただ走る。  電気はついていないけど、いるってわかった。鍵を差し込んで(くつ)を脱ぎ捨て駆け込んだ。暗闇(くらやみ)の中に座り込む恋人を見つけた。
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