望みに向かって

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 「行くよ」  びっくりしている彼女の冷たい手を取って僕は駆け出した。目的地(もくてきち)なんて思い浮かんでいなかったけれど、ここから彼女を逃がさなきゃって思ったんだ。  「だ、だめよ、(もど)らなきゃ」  「なんで」  「明日も仕事がある」  「それがしんどいくせに」  「し、仕事なんてしんどいものよ」  「ちゃんと食べてないだろ」  「食べてるわ! 食欲(しょくよく)がないだけで」  「寝てないだろ」  「少し寝不足(ねぶそく)なだけよ」  そんなにうるんだ目で何言ってるの。  僕は走りながら彼女を振り向いた。  「僕は君が笑えない世界なんて(いや)なんだけど!」
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