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二○XX年。我が国は新しく生まれ変わろうとしていた。ここまで他の政党を寄せ付けることなく一強の姿勢を崩さなかった民自党が先の総選挙で歴史的大敗を喫したのだ。
汚職、隠蔽、忖度とこの国の衰退を招いた悪しき政党を与党から引きずり落したことに、国民は歓喜し、主要都市は毎日お祭り騒ぎとなった。
我々の未来を担う新しい政党の名前は創造党。聞いたことがないのは無理はない。この党はここ三年でパッと出てきた政党であったのだ。
発足三年足らずの政党が政権を奪取できたのはもちろん理由がある。
創造党の党員に人間はひとりもいない。全員がアンドロイドという異色の政党。
あらゆる思考、理論を駆使し、人類の最高傑作のテクノロジーを搭載した人工知能集団。
この驚くべきニュースは瞬く間に世界に発信され国連は物議を醸したが、それは単なる水掛け論に過ぎなかった。
創造党が政権を握ってからというもの世の中は劇的に変わった。
米軍基地移設、他国との領土問題といった外交問題から子育て世代の援助の充実といった少子化問題を一挙に解決に導き、さらには原発に変わるエネルギーの代用まで成し遂げた。
人間たちが何十年とかけて全て上手くいかなかった事柄を数年でやり遂げたのだ。
ましてアンドロイド。政治家の不正、汚職はなくスキャンダルを主体にしている雑誌社は大赤字で倒産する事態となった。
しかしその二年後創造党は総選挙の末、大敗し再び民自党の政権に戻ってしまう。
首をかしげた海外メディアが街頭インタビューを試みると皆口ぐちに言った。
「愚痴のはけ口にもならない政治なんて面白くないよ」
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