あの日のこと

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「おめでと~!沙夏、すっごくキレ~!」 「ふふっ ありがと♪のの」 今日は、親友、沙夏(さな)の門出の日。 沙夏のウェディングドレス姿は本当に綺麗で、朝から涙腺が緩みっぱなし。 お酒の勢いもあり、気が緩めば涙が溢れてきそうになる。 「…ところで、のの。まだ来てないね?」 「へ?」 沙夏にこそっと耳打ちをされるがピンとこず、間の抜けた返事をしてしまう。 「せ・ん・り・くん!」 「…あぁ」 披露宴会場の一席、新郎の友人席に空いたひとつの穴。 披露宴会場で配られた座席表によるとそこは"あいつ"の席のようだ。 高校を卒業して10年近く経とうとしている。 その間、あいつとの交流はいっさいなく"あの日のこと"も甘くて苦い、思い出になっていた。 「やーっぱ忙しいんだろうね?お医者さんって」 「あいつ…お医者さんなの?」 「あ、知らなかった?今ね、近くの総合病院で…」 「沙夏~!!めっちゃキレーやん!!写真撮ろ~♪」 本日の主役である新婦は、非常に忙しい。 沙夏はののに手を合わせ「またね」と合図をした。
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