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「こんばんは。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。樹里さんとお付き合いさせて頂いています、渡瀬昴と申します」
そう言い頭を下げると
「昴…ゆっくりで大丈夫だよ」
樹里が手は繋いだまま、もう片方の手で僕の肩をそっと撫でた。少し急いだ口調になっていたのかもしれない。
「心配しないで、樹里。僕は大丈夫」
空いた手でそっと彼女の頬を包むと
「王子…」
という女性の声と
「どういう意味かな?樹里、教えて」
という男性の声がした。女性の声は真矢ちゃんでないので真澄さんだろう。男性の声は同い年くらいか…陸斗さんか…
「真澄さんとお呼びしても?よろしくお願いいたします」
「どうぞ…いくらでもお呼びしてちょうだいませ」
少々おかしな語尾に気づかぬふりで
「陸斗さん…樹里と話した意味は…彼女は僕が人見知りなことを気遣ってくれたということです」
と言う。すると
「樹里は…あなた…渡瀬さんに家族のことを話しているのですか?」
この家の主であろう男性に聞かれた。
「二郎さんとお呼びしてもよろしいですか?樹里はここにいらっしゃる4人を大切な家族として僕に話してくれました。そして…ここにはいないターシャとおじいちゃん、そしてご両親のことも」
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