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和食店で向かい合い、改めてよろしくと手を伸ばして樹里に触れようとするのは変態めいていると、心のどこかで一瞬思った…かもしれない。しかし天使に触れられるのか確かめなくては…ひょっとしたら透けて触れられないかもしれない。
ああ…実在する天使に触れている。そしてその天使が
「…輔さん」
俺の名を呼ぶ。その一言で一生とけない催眠暗示にかかったよ…樹里のこと以外はひとまとめ。樹里だけが特別。4年前に樹里に会う前に一度だけ仕事の付き合いでした見合いで‘輔さん’と初対面の女に呼ばれた気持ち悪さは全くない、心地よい‘輔さん’だが、さんはいらないと、その手を握り続けた。
年末からの話だけでは種明かしと納得しない樹里に、病院で初めて見たことを話す。すると早急に話を切り上げようとするので、思い出したくない心中を察するが、これでは俺の想いが伝わらない。ここまで言ったならばきちんと聞いて欲しい。
「もちろん俺が天使というのは喩えで…脆い羽を持つ樹里を、俺が姿を見せても見せなくても守れる男になりたいと…そう願って突っ走ってきたよ」
そう言った通り、ずっと見守ってきた。俺が店舗に行かない時に俺のカタワレを店へ送り込んでいる日もある。そこは今伝える必要はないか…とにかく‘プラトニック’と付け加えられた真相は不明だが付き合いにOKをもらったんだ。天使が俺の彼女になった。
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