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その後、樹里と数回食事デートを重ねた。わかったことは、樹里が自分から自分のこと家族のことを決して話さないこと。こちらが聞けば、何となく不自然でない程度に返事が返ってくるという感じだ。ターシャのことは、俺が病院で見たことと、ばあちゃんと数日一緒に過ごしたことで隠す必要がないということか…楽しい話を聞かせてくれる。楽しい話限定だが。
「今日は樹里は休みだっただろ?何してた?」
会えない日に当たり前のように電話できるのが嬉しい。
‘衣替え。クリーニング屋さんとスーパーへ行った’
2ヶ月で自然に話をしてくれるようになった。まだ寒い日もあるが、3月末になって冬物を片付けたんだな。
「今度の休みに春物の買い物に行こう」
‘いいよ。付き合うよ’
「えー樹里のもの買うんだよ」
‘今年は足りてるよ’
「俺にプレゼントさせてよ」
‘いつも美味しいものご馳走になってるからプレゼントもらってるみたいだよ’
「それはそれ、これはこれ」
‘うーん…考えておくね、ありがとう’
断るパターンだな。この2ヶ月で敬語がなくなり‘輔’とは呼んでくれるが全く頼る、甘えるということはしない。食事も迎えをいらないということもあるし、一度はいつもご馳走になっている礼だとハンカチをくれた。プレゼントは嬉しいがお返しをして一線を引いているような気がするのは…思い過ごしか?
「明日は遅いだろ?店まで迎えに行く」
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