王子様かしら…

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無理に来なくていいのに…そう少し思ったけど‘付き合う’ということに含まれる範囲かとも思うので言わない。私には以前、大学生の時に一人だけお付き合いした人がいる。その彼が言っていた。 「男はね、可愛い彼女の送迎を出来る限りしたいものだよ」 祖母が入院する前、1年近くお付き合いをした3歳年上の先輩。留学経験のある彼は3歳年上だったが学年はひとつ上だった。とても優しい男性…祖母に会ってくれたこともあって祖母も‘学生さんだけどすっかり大人の男性ね’と言っていたほど日本人の22歳男性にしては大人な彼だったと思う。頼りになる、甘えられる存在。家族以外にも甘えられるんだと初めて気づいた。 でも別れたのは私のせい…彼がどれだけ優しく触れてくれても、痛いだけの交わりしか出来なかったのだ。 だから私は輔に‘プラトニックなお付き合い’とわざわざ言った。手を繋いでもいい。軽くキスをしてもいい。でもそれ以上は私に求めないで欲しい。 「樹里…はじめまして…でいいかな?」 輔の兄だという彼も車から降りてくると、とても静かに私に声をかける。その時、何故か輔が小さく驚いたようだった。
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